ダイエットで恐いもののひとつがリバウンドです。我慢し続けた食欲が大きなストレスとなり、食欲を抑え続けることができず、結局はその反動でかえって食べ過ぎてしまうことになります。
食欲をコントロールしているのは脳の視床下部で、そこではエアコンの温度管理のように食欲が設定されています。その設定温度にあたるのが「セットポイント」と呼ばれる基準で、視床下部に集まってくる体内の糖分や脂肪の量を表すデータがその点より低くなると、脳は「食べろ」という指令を出します。それで食欲が出てきたり、満腹感を感じたりするのです。
しかし、何らかの理由でこのセットポイントが引き上げられてしまうと、通常の量を超えてもまだ脳が「食べろ」という指令を出し続けることになり、食べ過ぎてしまいます。つまり、太ってしまいます。この食欲は脳自体による指示なので、意志の力で抑えられるものではありません。このような状況でカロリー制限だけのダイエットをしても結局は失敗してリバウンドにいたるのはあたりまえなのです。
唯一の、そして根本的な解決法は引き上げられたセットポイントを正常値まで下げることにあります。
では、セットポイントを引き上げてしまう原因にはどんなものがあるのでしょうか。そのひとつに、ストレスがあります。
感情的なストレスは内面的には自分で解決したように思えても、ストレスによって上がったセットポイントは高いままで残る可能性があります。激怒したり、悲しみにくれたりしている瞬間は食べないけれど、その後に食べ過ぎる、といった具合にです。
失恋や怒り、退屈、孤独感など情緒的なストレスは色々ありますが、それに対する内分泌系の対応は同じです。このときに分泌されるホルモンはインスリンの働きを悪くして血液中にインスリンを過剰に放出させます。すると多量のインスリンによって、セットポントが引き上げられるのです。
インスリンとは細胞が血液からブドウ糖を取り込むために必要なホルモンですが、これがうまく働かなければいくら血液中にブドウ糖があって血糖値が上がっても、細胞はエネルギーを生み出すことができず、インスリンも働くことができない状態になります。これは食欲中枢には最悪の状況で、エネルギー源は有り余っているのに「もっと食べろ」という指令を出すことになります。
インスリンの働きを悪くする要素には、ストレス、肥満、動物性脂肪の摂り過ぎ、魚に多い脂肪の不足、そして必須ミネラルのクロムの不足があります。肥満するとインスリンの働きが悪くなるのでこの悪循環を断って肥満を解消するのはとても難しい問題になります。セットポイントの基本的なところを解決しないと肥満は解消できないのです。しかし、このシステムがわかれば、食欲と戦わずに肥満を解消することが出来ます。