応用心理学は基礎心理学とは違い、社会集団の中にいる人間個人に視点をおき、基礎心理学で得られた法則や知識を実際の問題に役立てる能力を身につけます。
一般的には次のような分野があります。
臨床心理学
臨床心理学は、悩みや問題を抱えた人を援助する方法を考える学問です。
心理学的検査および診断や心理療法の領域を含みます。精神医学的な知識、自己理解も必要になります。
臨床心理学の特徴は、ほかの心理学との関係が深いことです。
心理療法の具体例としては、精神分析学、分析心理学、クライアント中心療法、行動療法、遊戯療法、催眠療法・自律訓練法など多技にわたります。
臨床心理学は主観が大きく作用しますので、教官によっては流派や考え方が異なります。それだけに自分にあった学びの場を探すことが大切です。
産業心理学
産業心理学には3つの研究分野があります。
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組織と人間の関係
組織のあり方、人間関係、仕事の条件、採用、人事など
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消費と人の関係
売る側、買う側の心理的価値に基づく消費行動
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健康と人の関係
心と体の病の治療、ストレスを克服する力の育成
昨今の産業界は製造重視から情報などのサービス産業を中心に変化しています。
雇用関係や組織構造の変化により、従業員やその家族、さらには教育や文化にも影響しています
このような領域を扱うためには、広い視野で現象を観察する感受性と多角的な発想力が必要です。産業界でおきている問題の解決に向けて心理学、人間工学、生理学などがどのように応用されているかを学ぶのが産業心理学です。
教育心理学
産教育心理学は、教育課程における心の働きを心理学の知識と方法によって理解しようとする学問です。人間の成長には学習は欠かせません。
心理学でいう学習とは、体験や観察などにより、知識や技術、態度、価値観、思考力を身につけることを意味します。
つまりは、学校教育ばかりではなく、人間が生涯にわたって行われるもの全てが対象になります。具体的には4つの領域があるとされています。
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「発達」
発達段階の心理的特徴、発達の法則、遺伝と環境の関わり、教育が発達に及ぼす影響など。
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「人格」
知能や性格などの個人差やその構造、発達・形成の過程、欲求耐性など。
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「学習」
学習過程や関連する認知・思考・記憶の働きと発達など。
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「測定・評価」
知能や性格特性の測定、学力の評価などの研究。
教育心理学では、子ども達の学校や社会への適応を研究することも含まれています。
発達心理学
発達心理学は、人間の生涯の観察から発達の法則を発見しようとする科学で、乳幼児心理学、児童心理学、青年心理学、老年心理学に細分化されます。
さらに知能の発達、人間関係の発達、感情の発達などに分けられることもあります。障害児の発達臨床保育実践に関することもこの分野に含まれます。
こうして、発達心理学では生涯を通して成長し、発達を続ける人間について考えていく学問です。
これに合わせて、発達心理学の理論や各発達段階におけるプロセスと課題、成人期以降の発達と諸問題、を学びます。
発達の段階で起こる課題や諸問題とは、歩行、善悪の識別、読み書き、仲間づくりなど、成人期以降の諸問題とは、自立、母親学、父親学、親としての成長などがあり、発達段階でのつまずきが飛躍へのステップでもあることを理解していきます。
認知心理学
認知心理学は、認知を人間の情報処理過程とみなして進められている学問です。大別すると知覚、記憶、思考、言語などに分類され、人間の情報処理について研究が進んでいます。
コンピューター技術や情報工学の進展が進み、心理学に影響を与えたことが認知心理学の研究につながっています。
知覚研究では、感覚や形、空間、運動の知覚問題を学びます。思考・言語理解の研究では問題解決過程や概念・推理、象徴・記号、知能の問題を扱います。
実際の授業では行動主義と行動科学、人工知能、記憶モデル、短期記憶、長期記憶、知識の表像、問題解決と思考などがテーマになります。パソコンを使ったデモンストレーションや集団実験をまじえた講義もあります。
心理実験、データ解析、計算機科学、神経生理学、言語学、教育学などの隣接領域になじむことも必要になります。
犯罪心理学
なぜ犯罪を起こすのか?罪を犯す人と犯さない人の違いは何か?罪を犯した人の社会復帰は?
犯罪心理学は、心理学分野でも特殊な分類と言えます。
禁じられている犯罪行為をする場合の人間の心のあり方、動き方について研究する応用心理学の一つが犯罪心理学です。
人間の心に秘められた異常性、本性などを知ることは、犯罪行為の予防、再犯防止に役立てることもあります。
現代では少年の非行も低年齢化し、非社会的な生き方から犯罪に関与する傾向にあります。
犯罪行為だけではなく、社会に適応できなくて生じる問題行動、少年本人の神経症的な訴えも含めて心の健康の問題が大切になることでしょう。
マスコミ、雑誌、テレビなどから溢れる情報に流されない判断力も求められます。
人格心理学
人格心理学は、臨床心理学の基礎ともなる領域で、「性格心理学」とも呼ばれます。その人独自のユニークな存在として基礎づけているものが、人格(パーソナリティ)と考えます。
パーソナリティのとらえ方にはさまざまな立場があります。
- 類型論~パーソナリティをいくつかの典型に分類します。
- 特性論~どんなときも一貫している行動傾向に視点をおきます。
- 力動論~自我の動きを中心に考えます。
- 状況論~行動の状況依存を重視します。
最近では、青年期の人格形成が乳幼児期とどう関連しているか、また自らが形成して作り変えていく人格の可能性も取り上げられるなど、青年期の人格形成が注目されています。
人格心理学は他の心理分野とも密接な関係があるのも特徴です。
家族心理学
家族療法と呼ばれる心理療法があります。
症状のある子ども1人と面接するより、家族全員と面接します。そして誰が原因かという直接的因果関係を追求するより、家族全体のシステムを変化させることで解決をはかろうとする手法です。
家族心理学では、家族全員がお互いに原因にもなれば結果にもなるという、円環的な見方をします。家族療法を背景にして、問題の予防、アセスメント、ライフサイクル、コミュニケーション、家族社会学的見方などを取り込んで成立します。
家族はメンバーの生存と憩いの場であり、人間形成の基盤になります。高齢化社会への対応も含めて、温かい家族のあり方を模索する分野が家族心理学といえます。
知覚心理学
知覚と呼ばれる感覚には、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚という、いわゆる「五感」があります。中にはヤマ感、第六感をもつ特殊な人がいますが、知覚心理学ではこの「五感」をテーマにします。
人間は物事に適応するときに、五感で判断します。外部からの情報を取り入れるプロセス、そのメカニズムの解明を目的とするのが青年心理学です。この主題は、心理学だけではなく、生理学、計算機学などでも研究されています。
知覚心理学の特徴は、日々の体験がそのまま研究や学習対象になります。
例を挙げると、視覚については、色、明るさなどということから、運動、奥行き、形、文字、単語、物体の認識というレベルまでが対象になります。
実際の学習内容は、五感に基づく知覚の方法、知覚の発達過程と外界との関係、各種知覚理論の対比、知覚の意識と心などです。
以上がざっと、学問としての心理学の類型です。
ちょっと難しいところかもしれませんが、
分かりやすく面白い、皆さんの興味のあるところは、心理療法の方だとおもいます。
心理療法については、次にご紹介します。